真宗大谷派 長崎教務所
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■第2回 「長崎墓情(一)」
えー、長崎に住んでおりますと、「長崎は異国情緒豊かな街ですね」なんてことを、よくよく耳にするわけでございますが、どこに「異国情緒」を感じるか?てなことになりますと、その方の生活の現場がどこかってことが、大きく関わってくるものでございます。
私も、あちらこちらで「異国情緒」を感じておりますんでしょうが、僧侶であるせいでございましょうか、かなり偏ったところで、「それ」を強く感じてしまいます。お墓でございます。聞くところによりますと、長崎のお墓には、外国、特に中国の影響を強く受けたところが、何点もあるんだそうですが、そのひとつが、お墓が塀に囲まれているというところでございます。もちろん、塀に囲まれたお墓が普通という地方もお在りになりましょうが、長崎のお墓は、墓石を囲んで塀が立っており、中にはベンチまでございまして、立派な門までついてございます。
長崎生まれの方でしたら、一度位したことがあるんじゃないかという遊びがございまして、私たちは「塀鬼(へいおに)」と呼んでございましたが、要するに、お墓の塀の上でする鬼ごっこでございまして、平均台を渡るがごとく狭く不安定な塀の上を移動し、鬼に触れられるか、地面に落ちたら負けという、運動神経に不自由しております私などには、非常にシビアなルールでございました。夜な夜な同じ悩みを持つ仲間を思って涙しておりましたが、元より他所のお墓には塀がないと知りましたのは、京都に住んだ学生の時分でございました。
では、何故長崎のお墓が塀で囲んでいるのかと申しますと、長崎に住んでいた華僑の方々の習慣のためでございました。華僑の方々の出身地、中国南部の福建省などでは、お墓は、いわゆる亀甲墓(きっこうぼ)でございました。沖縄などにもございます、亀の甲羅(こうら)のような形をしたお墓のことで、非常に広々とした作りになっております。春の彼岸になりますと、そのお墓の前で、一族郎党相寄り集い、馳走(ちそう)を用意しドンチャン騒ぎというのが、習慣でございました。それを、清明(せいめい)祭、もしくはただ清明と申しました。
清明とは、二十四節気(にじゅうしせっき:春分や夏至といった、一年を24等分した中国伝来の季節区分)の一つで、4月5日ごろになります。春分の次の節気でございますれば、春の陽気に誘われ、万物もすがすがしく明るく美しく、花は咲き乱れ、お花見シーズンでございます。そんな折に、お墓にお参りし、草むしりなどお墓の掃除をし、家族で歓談しながら食事をしたり飲酒をしたりと、何とものどかなものでございます。そういった習慣が、やがて渡来した華僑の方より長崎の者へと伝わっていったのでございます。
今では、その習慣も廃れてしまいましたが、坂道や階段を上りきり、ようやく着いたお墓のベンチに座って眺める長崎の風景も、なかなかに乙なものでございますれば、是非一度、長崎へお足をお運び願います。
残りの話は、また別の機会に。それではこれにて、御免被ります。
文:末永 仁